
便秘症・肛門疾患
便秘症・肛門疾患
便秘という言葉は一般的によく使用されていますが、定義があいまいな言葉です。
よく便が毎日でないから便秘だとお考えの方も多いですが、排便回数頻度は人により異なり、便通が3~4日に1回であっても、排便に苦痛(痛みや不快感・出血)を感じなければ便秘ではない可能性が高いです。逆に毎日便がでていても、便が硬い、いきまないと出ない、小さな‘ころころした’便しかでないなどの「排便困難感」があれば便秘症の可能性も考えられます。
よく見られる症状には排便回数の減少や、残便感、腹痛、腹部膨満感(お腹が張る感じ)、食欲不振などがあります。
下記が挙げられます。
腸管拡張のない機能性便秘は、さらに結腸通過時間の異常と直腸肛門機能異常でさらに分類がわけられますが、それぞれが複雑に混在していることも少なくありません。
運動不足などで大腸の運動が弱くなる弛緩性便秘と、排便に用いる筋力の低下や、繰り返し便意を我慢したために体が便意に対して鈍感になる(排便反射の低下)直腸性便秘なども含まれます。
便秘になった場合には、例えば大腸がんでも最初の症状が便秘ということもあり、必ずこのような病気が潜んでいないか、大腸内視鏡検査などを受けることがとても重要になります。
第一に、必ず怖い病気が潜んでいないか、大腸内視鏡検査などを受けることがとても重要になります。その上で、機能性便秘の治療の中心は、規則正しい生活・排便習慣、食事・飲水、運動になります。
特に単純性便秘では食生活、排便習慣に問題があることが多いため、規則的な生活、適度な運動(テレビ体操など)、十分な水分摂取(1.5〜2L位を目安)をしてください。
排便習慣の改善も重要であり、便意の有無にかかわらず毎日一定の時間、できれば朝食後に排便できなくても、数分間トイレに座る習慣をつけてください。また、食物繊維の多い食品を摂るようにしましょう。食物繊維は便の量を増やす作用があります。
あくまで、治療の中心は生活改善ですが、下剤の手助けが必要な方も多くいらっしゃいます。かつては、下剤には便の水分を増やして排便を容易にさせる機械性薬と小腸または大腸に刺激を与えることで腸管運動を起こす刺激性の下剤の2種類しかありませんでした。
しかし、近年はさまざまなタイプの新規薬剤が発売され、便通障害に有効な漢方薬など非常に幅広い治療が可能となってきました。
便通障害の原因などにより、個々の患者様の状態に応じて必要な下剤は異なります。ときには原因が複数にわたり、難治なこともございますが、なかなか便秘が良くならない、という方は是非一度ご相談ください。
→そんな症状のときは、痔疾患の可能性があります。このような症状があれば診察をおすすめいたします。
当院では診察の際には、特に女性の患者様の場合は、必ず女性看護師が立ち会い、患者様のそばに寄り添いながら診察の介助をします。必要以上の肌の露出は避けるように十分に心がけております。
体勢は、診察ベッドの上で体の左側を下にして横向きに寝転がっていだきます。横向きに寝転がっていただいたまま、体育座りのように、やや丸まるような格好になります。
診察のはじめ、視触診です。出っ張りがあるかどうか、赤みがあるかどうか、周りの皮膚をおすと痛むかどうかなどを拝見させていただきます。
ついで指診(指の診察)で、肛門に手袋をした指を入れて肛門の中を触診します。
この触診で、腫れているところ、痛むところ、硬いできものがないかを調べます。
さらに、肛門鏡と呼ばれる金属の筒を肛門にゆっくりと差し込み、肛門部を直接視認しながら観察します。(少し奥の直腸を観察する場合は直腸鏡を使用することもあります)
触診も肛門鏡も十分にゼリーをつけてすべりやすくし、傷まないようなコツをお伝えしながら、なるべく痛くなく楽にできるように診察しますが、切れたり膿んだりした部分の診察ではどうしてもある程度痛むこともあります。
痔は次の主には3つに大きく分けられます。
→直腸肛門部の血行が悪くなり、血管(静脈)の一部がふくれあがる状態です。
場所により更に2つに大別されます。
→硬い便などが原因で、肛門付近の皮膚が切れてしまう状態
硬い便をした後に肛門部分が切れたり、裂けたりしたもので少量の血と排便後も続く痛みがあります。
痛みのために便秘になったり、何度も繰り返すと潰瘍や皮膚垂れの原因となり手術が必要となることがありますが、症状が繰り返さないうちに、便秘の改善や投薬療法を適切に行うことで重症にならないようにすることが可能です。
→肛門周囲の皮膚の細菌感染が原因で、赤く腫れ上がったり、膿がたまったりする状態
肛門付近より、細菌が皮膚に入り込み、炎症を起こすことがあります。そこに細菌が繁殖し‘うみ’がたまると、肛門周囲膿瘍と言い、時に激しく痛み、熱が出ることがあります。膿瘍内の‘うみ’が出ると一旦改善しますが、ここに膿を出す管が残ったものを痔ろうと言います。何度も炎症を起こし、膿が頻回に出るような場合は手術が必要となります。
肛門周囲の皮膚が炎症を起こしたために、かゆみやべとつき、浸出液で下着が汚れるなどの症状が見られます。
原因はアレルギーや真菌症(カンジダなど)などです。
便に血が混じるという症状が生じるのは、痔だけではありません。
最も気を付けなければいけないのは大腸がんです。大腸がんの中でも、直腸がんなど比較的に肛門に近い大腸のがん(直腸がん・S状結腸がん)では、痔疾患とよく似た症状があります。トイレの時に紙に血が付いた、便に血がついていたなどの症状です。
またがん以外でも潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患、虚血性腸炎、大腸憩室出血等の多岐にわたる疾患の可能性もあり、おかしいなと感じましたら、迷わず受診をお勧めします。